昨日ご紹介した、サウスウェスト航空の客室乗務員によるラップの機内放送、ご覧になりました?
(念のため、もう一度リンクを貼っておきますね)
ラップで機内アナウンス(日本語字幕つき)The Rapping Flight Attendant
すごいですよね。
あんなの私には絶対できないことだ。
でも、あの客室乗務員も言っていたように、ラップができなくても、歌が得意なら歌を披露すればいい、ジョークを言ってもいい、ただ立ってるだけでキレイならそれでもいい。
型に捉われずに、自分のできる精一杯のサービスをすればいい、というのがサウスウェスト流。
だが、アメリカは何しろ人種のるつぼ。
ひょうきんで面白い人もいるが、逆に超カタブツもいる。
極端に振幅が広いのが、アメリカの面白いところでもあり難しいところ。。。
当然、「けしからん」というお叱りの声も上がった。
しかし、共同創立者のハーブ・ケレハーに、規律を押し付けようという気はまったくなかった。
何しろ、ウィスキーをオマケにつけて正規料金の切符を売ることで、競争に勝ち残った歴史があるのだ。
社員が自由奔放にのびのびとしていたからこそ、ああいう奇想天外の発想も生まれ得た。
規律を押しつけて自由の芽を摘むことは、長い目で見れば自分の首を絞めることに他ならない。
弱小企業なのだから、大企業と同じ考え方をしていては潰されてしまう。
そこでケレハーは、苦情があったときには、状況を詳しく調査し、本当に悪意があって失礼をしていたときは誠意を持って謝罪するが、単なるジョークが気に入らない、というようなクレームについては、「自由にサービス精神を発揮せよというのは、弊社が指示していることです。うちは社員を100%信頼しておりますから」と言って、社員をかばった。
何でもかんでもお客様が正しい、とは考えず、モンスターカスタマーのような客には「うちのサービスがお気に召さないなら、他へ行ってくださって結構」という姿勢を貫いたのだ。
余談になるが、乗務員は、次のようなジョークで応戦している。
「もし皆様が楽しいひと時を過ごされたのでしたら、私たちの名前を覚えてください。レジー、サム、ピートです。でも私のばかさかげんに呆れてしまわれたのなら、違う名前を覚えてくださいね。フレッド、トム、ハリーですよ」
(出典:『破天荒!!サウスウエスト驚愕の経営』日経BP社)
このように、サウスウェストは、社員とその個性を大切にした。
社員は「家族」だから、場合によっては外の世界を敵に回しても味方につかなければいけないこともある。
そう考え、家族である社員と一緒に成長しようとした。
社員の一存に任せすぎて、4,000万円相当もの損失を出してしまったこともあった。
しかし、それでもサウスウェストはその社員をクビにはしなかった。
失敗から学んで成長すれば、損失以上の価値があったとして、のちにその社員を昇進させている。
サウスウェストにとって、社員は会社を死なせないために、死にもの狂いで闘ってくれる同志であり、かけがえのない財産だった。だから、どんなに状況が厳しくなっても、レイオフなんて薄情な仕打ちはあり得ない選択だった。人材は生きた人間であり、簡単にコストカットするものではない。同時多発テロやリーマンショックの影響で、大手航空会社が次々とレイオフを行っても、他の部分でコストをカットするようにして、社員のレイオフを行わなかった。
サウスウェストは従業員の努力に報いるために、従業員持株制度と利益分配制度を早くから導入して、会社の利益が上がれば社員もそれに応じて利益を受ける体制を取っている。「従業員の満足」「顧客第二主義」を基本方針に掲げ、それを実際に実践しているのだ。
さらには、個性を重視する方針に従い、ぬり絵がうまくできずに先生に叱られている子供の絵の横に、「大変よくできましたね。サウスウェストは枠にはまらない人を歓迎します」といった求人広告を出して、いわゆる「落ちこぼれ」のレッテルを貼られた人材も拾い上げている。
やることなすこと、逆転の発想ばかりのようだが、ただ単に大企業と正反対のことをするだけではない。
サウスウェストは、謙虚な姿勢も忘れなかった。
自分たちは、弱い立場であることを忘れてはいけない、と常に言い聞かせてきた。いい気になって慢心するのが一番危ないとして、利益が上がってきたときも、他の短距離便が次々と国際線に進出していくのに、軽々しく手を広げたりはしなかった。
大胆なときは大胆だが、勝算の見込みが高くない場合は路線拡大を見送ってきた。
・・・生まれたときに潰されかけ、運航までに4年の月日を費やしたサウスウェスト。
そこには、資金を裁判で使い果たし、圧倒的に不利なスタートという状況で、社員が知恵を絞り、大企業の度重なる挑戦にも屈せず、いじめられてもいじめられても力を合わせて立ち上がってきた歴史があった。
気が付けば、創業時に圧力をかけてきたブラニフ航空も、トランステキサス航空も今はない。
あのコンチネンタル航空もユナイテッド航空と合併して、2012年に消滅してしまった。
いじめっ子だった大手がみんな姿を消してしまった中で、サウスウェストだけが生き残っている。
景気の動向に左右されず、現在も着実に黒字運営を続けているのだ。
私は何だか感動してしまった。
こんな映画みたいな話が本当にあるなんて・・・。
しかも、さらにびっくりするようなオチがあった。
何とニューヨーク証券取引所のサウスウェストの銘柄は「LUV」(=LOVEのスラング)なのだ。
あまりにもできすぎた話じゃないか?
私だってこんな会社で働いてみたい!と思ってしまう。
(まあ無理だろうけど・・・。汗)
サウスウェストのホームページを覗いてみた。
今年で創業47年目を迎えたサウスウェストは、ようやく少しだけ路線を拡大したようだ。
お隣のメキシコとカリブまで国際線を飛ばしている(収益が見込める路線だ)。
春休みの学生向けに片道13ドルなんていう破格のキャンペーンも見受けられた。
相変わらず庶民の味方みたいだ。
どうやら2008年に創業者が名誉会長へと退いて、経営責任者が変わったようだ。
カリスマ創立者が退いた後、これからがサウスウェストの真の腕の見せ所だろう。
サウスウェストは、第2章を歩み始めている。
そして、今回日本から飛び込んできた、スカイマークの記事。。。
ミニスカを客室乗務員に履かせようなんて、サウスウェストの創業当時の作戦を彷彿とさせる。
日本という土壌で、21世紀に、そのような思い切った戦略は成功するだろうか?
スカイマークは、サウスウェストのように、大きく羽ばたくことができるだろうか?
スカイマークの挑戦は、始まったばかりだ。
今後の活躍を見守って行きたい。
※※※お読みいただいて、ありがとうございました。
参考文献:
1.(ちょっと情報が古いですが)
- 破天荒!/日経BP社
- ¥1,890
- Amazon.co.jp
2.Wikipedia 「サウスウェスト航空」
3.サウスウェスト航空のジョーク(英語)
4. こあらオヤヂさんのYouTube動画(上記)
5. その他、個人の旅行記のブログ
ありがとうございました。