皆様、こんにちは!ランサムはなです。
お元気でお過ごしですか?
10月15日に写真で見る 看板・標識・ラベル・パッケージの英語表現が発売されてから、看板英語についてのコメントをお寄せくださったり、写真を送ってくださる方が増えました。皆様、どうもありがとうございます。
先日は、読者のAYA様から「日本の看板英語では『Pleaseの氾濫』が見られる」とご報告をいただいたので、「日本の看板英語の不思議」というブログ記事を書き、「次回はぜひお写真も一緒に送っていただけると嬉しいです。」と書いたところ、早速AYAさんが京都行きの新幹線の車内で見かけたという看板写真を送ってくださいました(AYAさん、ありがとうございます)。
送っていただいた写真はこちら。
う~ん、確かに「Please」が多いですねぇ。
AYAさんが送ってくださったもう一枚の写真はこちらです。
やっぱり「Please」が多いですねぇ。
ところが、です。この「Pleaseの氾濫」を困ったことだと思っていたAYAさんが京都で外国人にも人気のホステルに宿泊され、この話をホステルのオーナーさんと話したところ、オーナーさんは
「Pleaseは日本らしくていいじゃないですか」という主旨の発言をされたというのです。
ていねいなのは日本の特徴なんだから、間違っていなければいいのでは?・・・という解釈をされていたのだとか。
う~ん、なるほどねぇ。そういう解釈もできないことはない。
しかもそのオーナーさんは、「小さな定食屋などがメニューで手書きで英語を書いていて、それがたとえ間違っていたとしても、それはそれで頑張っているんだからいいじゃないか」という見解もお持ちの様子だったとか。
う~む・・・。
なるほどねぇ。
たとえ標準の英語とは違っていても、「日本らしさが出ているからいいじゃないですか」って言う意見って、他でも見たことがあります。こういう意見の持ち主って、大抵が日本を好意的に見ている外国人とか、親日家の外国人に囲まれている日本人に多い。
でも、私は翻訳者という立場上、その見解には賛成しかねるんですよね・・・。
だってそれって、寿司職人が「カリフォルニアロールは本物の寿司とは言い難いけど、アメリカらしいからいいじゃないですか」って言ってるようなものでしょ?
そして、仮に百歩譲って寿司職人が「アメリカらしくていいじゃないですか」って言ったとしても、自分もカリフォルニアロールを作って出すようになるかというと、そういうことはないと思います。
アメリカのお寿司屋さんではカリフォルニアロールは定番メニューですが、日本のお寿司屋さんではあまり見ないし、見たとしてもあまり目立たない存在としてひっそりと置かれていることが多いような気がする。
アメリカで暮らしていると、日本人ではない国の方々が経営する日本料理屋さんによくお目にかかります。
そこではトンカツが「ドンカツ」って書いてあったり、「焼きそば」を頼んでみたら棒そばを炒めたものが出てきたり(先日のブログに書いたウチの学生みたい笑)、お寿司なのにすし飯じゃなく普通の白米だったり、「なにこれ?」ってぎょっとすることが結構あります。ラーメンを頼んだら辛ラーメンが出てきたこともあるし(この経験についてはかなり前にブログで書きました)。味噌汁が「前菜」として、レンゲ付きで主菜よりも先に出て来るのは、もはや定番。
でもそれを私が「アメリカらしい」と微笑ましく見ているかというと、決してそういうことはありません。爆笑ネタにはなってるかもしれませんが、好ましいとは思えないですよ。
たまにカリフォルニアロールやらドラゴンロールやら、斬新なアイデアで美味しい巻きずしが生まれたりすることもあるから、工夫すること自体は悪いことだと思わないけど、別のジャンルの食べ物だと考えています。
私が長年携わってきた「ローカライズ」という仕事は、別の言い方をすると「現地化」と言って、現地の人が違和感なく商品を購入し、使っていただけるようにする仕事です。
たとえばアンケート案件なんかで、英語を直訳すると「アンケートに回答すると、30ドルのギフト券がゲットできるよ!」みたいなハイテンションになっちゃう文章は、そのまま日本語にすると限りなくバカっぽい響きになります。
そういう文章は、日本の大切なお客様の失笑やお怒りを買うから、「アンケートにご回答いただいたお客様には、30ドルのギフト券を進呈させていただきます」みたいな言い方に書き変えます。「いただく」とか「させていただく」なんて表現は英文には盛り込まれていないですけれども、そういう言い方にした方が回答していただける確率が高くなるわけです。あらたまってお願いをする以上、「!」も違和感があるので削除します。
そういう仕事を長年やってきた経験からすると、「微笑ましいと思ってもらえていいじゃないですか」という意見は、読み手(看板の事例で言うと外国人の方々)の読みやすさとか、利便性を考慮していないという点で、自己満足的であり、お客様への配慮に欠ける、と思えてしまうのです。
親日家の方には「微笑ましい」と思ってもらえても、そうでない訪日観光客の方々はそうは思わないのではないでしょうか。
「Please」を増やす程度なら特に問題はないかもしれませんが、親日家の好意的な解釈に甘んじていると、少しずつ「ずれ」が大きくなっていく可能性があります。
やはり英語ネイティブの方々が誤解することのない、正しいわかりやすい表現で表記してさしあげることが、本物の「おもてなし」ではないかと私は思うのですが、皆様はいかがお考えでしょうか。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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