皆様、こんにちは!ランサムはなです。
前回のブログで、「アメリカ人に近付こうとすればするほど、日本人代表として振る舞うことを求められる」という気づきをシェアさせていただきました。
いくつかコメントもいただき、ありがとうございます!
まあ、そんなわけで、海外在住の翻訳者・通訳者は、多かれ少なかれ「にわか親善大使」の役目を仰せつかることになって慌てます。
本人としては別に日本代表になるつもりで海外に行ったわけではないので、想定外。
準備ができていません。
なのでなかなか苦しい思いをすることもあります。
たとえば、よくコーヒーショップで一緒にお仕事をさせていただいている、仲良し翻訳者のTさんから聞いた話。
Tさんは、翻訳を続けながらキャンピングカーで全米各地にキャンプに出かけてしまう、私にとってはとても羨ましい理想的なノマド翻訳者なのですが、その彼から聞いた話を紹介します。
彼はここ数年、テキサスの地元の小学校の「国際理解デー」みたいなところに行って、日本を紹介するというボランティアを続けています。
教室に行って、児童を前に日本の紹介をするそうです。
で、その年は、日本を紹介する文化の一環として、「習字」を教えることにしたんだとか。
「で、教壇に立って、『幸』って文字の書き順を教えることになったんだよ」とTさん。
「ところがさ・・・」
「どしたの?」
「いざみんなの前に立って、大勢の子供たちに注目されてる中で、久々に漢字を書こうとしたら、頭が真っ白になっちゃって・・・」
「ほお」
「『幸』って字を度忘れしちゃったんだよ!」
「えっマジ?」
「でもさ、みんなが見てる前で『忘れた』なんて言えないからさ・・・」
「うん、それで?」
「知らん顔して書いてみせたんだけど、間違ってたの!」
「えっ??」
「自分が書いた字を見たら、どう見ても『辛』にしか見えないんだよ!」
「ひゃー、『幸』を『辛』って教えちゃったの??」
「そう!」
「ありゃりゃ・・・」
「しかもさ、冷や汗だらけで何とかその場を取り繕ったと思ったら、授業が終わった後で、先生が『せっかく書いていただいた美しいお習字なので、記念に飾っておきましょう』なんて言うんだよ!」
「うそー!!」
「もう、『やめてやめてやめて!絶対やめて』って必死でお願いしたよ!日本人として謙遜してるんじゃなくて、ホントにやめてって」
私、涙が出るほど笑ってしまいました。
「大変だったねえ、Tさん」
「だけどさ、もっと脱力したことがあったんだよ」
「何、何?」
「授業が終わってから、子供たちが感想文というか、お礼の手紙ってのを書いてくれるんだけど・・・」
「へー、かわいいねえ」
「それがさ、『中国について教えてくれてありがとうございました』って書いてあるんだよ!
しかも一人じゃなくて、何人も中国って書いてるんだよ・・・
あんなに冷や汗かいて日本代表としてボランティアやったのに、何だったんだって感じだよ!」
いやー、Tさん、なかなかお「辛い」体験だったようで・・・。ご苦労様でした。
・・・とまあ、こんな試行錯誤を繰り返しながら、現地日本人による草の根親善大使活動は、細々と続いているのであります。