北海道富良野市で暮しているときに、田舎暮らしはいろいろと得るところが大きかったけれど、同業者がまわりにいないという点では、孤独感を感じることがあった。
そんなとき、アメリカやイギリス、オーストラリアなど、海外在住の翻訳者といろいろと他愛ないおしゃべりをすることが、大きな息抜きになり、励みになった。
一口に海外在住の翻訳者と言っても、いろいろな人がいる。
現地の一流大学を卒業して、誰もが知っているような一流企業に勤めている優秀な人もいれば、国際結婚をして現地に根付き、何人ものお子さんを育てておられる方もいる。
一方、日本人夫婦だけれど海外で暮らす決心をされた方、ご主人と死別.・離別して、女手1つでお子さん(たち)を育てておられる方、1人で海外生活を楽しんでおられる方もいて、本当にさまざまだ。
事情は人それぞれだが、異国に根を張ってしっかりと生きて行くという人生を選択した方々だから、明るく根アカで、強い人が多い。
そして、(他のコミュニティを知らないので)翻訳者コミュニティに限って言えば、海外在住の翻訳者は、助け合いの精神がものすごく強いのである。
海外在住の日本語翻訳者のコミュニティの大きな特徴は、「日本人」「日本語」というだけで、大学の同窓会のような連帯感ができることだと思う。
私の場合、アメリカの大学在学中にプレスリリースの翻訳のアルバイトをしたことがきっかけで翻訳をするようになったので、仕事を増やして行くために、米国翻訳者協会(ATA)の学会に出席して、日本語部会で名刺を交換するところから人脈作りが始まった。
学会で履歴書を見た翻訳会社が声をかけてくれたり、他の日本語翻訳者がプロジェクトに誘ってくれたりして、仕事が少しずつ増えて行った。
ただ、当時はインターネットが登場して間もない頃で、ネットで調べれば大抵のことがわかる、というほどネットが充実しておらず、不自由も多かった。
わからないことがあって、近くの本屋/図書館で調べてみようと思っても、近所の本屋には英語の本しか置いていない。
ニューヨークとかロサンゼルスの大都市であれば別だが、テキサスのような田舎では、買物のついでに紀伊国屋に寄って・・・などのような、日本にいれば普通にできることも、夢のまた夢の「贅沢」だった。
日本から本を取り寄せるとなると、送料もバカにならないし、駆け出しの翻訳者にとっては痛い出費だ。
しかし、資料が入手できないからと言って、おざなりな翻訳を納品することは許されない。
そんなときに、アメリカやイギリス、オーストラリア在住の翻訳者にメールで「SOS」を出すと、この人たちは、自分のことのように必死になって助けてくれようとするのだった。
「XXがわからない」と相談すると、自分の蔵書を引っ張り出してきて「自分が持っているこの本にはこういうことが書いてある」、「私がネットで調べたらこういう結果が出てきた」「専門家の友人に問い合わせたらこういう答えだった」、など、できる限りの手を尽くして力になってくれようとする。
今は個人情報保護の関係でそこまではできないが、日本の関連機関にわざわざ国際電話をかけて問い合わせてくれた人もいた。
ひょっとしたら、仕事の報酬よりも、国際電話料金の方が高かったかもしれないのに・・・。
お互いに異国の不自由な環境で苦労しているせいもあるかと思うが、本当に親身になって手を貸してくれるのだ。
こんなふうに苦楽を共にしてきた仲間とは、今も仕事でご一緒させていただいているし、仕事のことはもちろん、近況やおしゃべりなど、親しくお付き合いさせてもらういい関係だ。
それでなくても翻訳は1人でする単独作業だから、こういう支えがあると孤独感が薄れるし、みんな世界中、それぞれの場所でがんばっているんだな、と思うと、私も今日一日がんばろう、と元気をもらって仕事に戻って行くことができる。
日本の翻訳者の方々とも、このようなかけがえのないつながりができればいいなと思う。
次回は、海外の翻訳者とつながっていてよかったと実感した、具体的な事例をお話ししますね。
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ブログ覗かせて頂きました☆改めていろんな価値観があることを認識でき、拝見できてよかったです♪これからも更新応援してます!まだ未熟者ですが、これから仲良くできたら嬉しいです★