翻訳仲間と最強のコラボ

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皆様、こんにちは!
ツイッターでは一足先にお知らせしたのですが、仲良くしていただいている翻訳仲間のYさんが、私たちがコラボした先日の大型案件の仕事について、ブログを書いてくださいました。
働き盛りの女たち」という題ですので、ぜひご一読ください。
今回は、同じ話を私の視点から書いてみたいと思います。
1月上旬に、地元のエージェントから、「日本市場への進出を目指す、某化粧品会社の販促資料を翻訳しませんか?」というお話をいただいた私・・・。
まずは在米邦人の方を対象に、資料を翻訳してほしいということでした。
分量は、3万語から五月雨式にスタートして、最終的には10万語程度になるという大型案件。
・・・あ、翻訳業界の実情をご存知ない方もいらっしゃるかと思うので補足しておきますと、翻訳者が一日にこなせる翻訳量というのは、実働8時間で2500語もできれば一人前と言われております。
ですので、3万語と言うと、ほぼ半月分の仕事が確保できたことになって、なかなかおいしい話なのです。
ありがたいお話しですが、私の場合、社内翻訳者もやってるでしょ?
時間が限られていますのでね・・・。
最初は辞退させていただこうかと思ったのですが、このエージェントはレートも悪くありません。
物は相談なので、「かくかくしかじかで、あんまり時間が取れないんですよね」と説明すると、
「じゃあ、何人か知り合いの翻訳者に声をかけてチームを組んで、一部でもいいから参加してくれ」と言う話に。
そこで最初に白羽の矢を立てたのが、元旦明けのブログでもちらっと紹介した、4人の息子さんを立派に育て上げておられる、アリゾナ州在住、翻訳歴27年のシングルマザー、Yさん。
実はYさんとはこれまでにも何度かタッグを組んでいて、どういう翻訳をする方かということもわかっているし、マーケティング関連がお得意な方なので、こういうお仕事にはぴったりかと思ったのです。
で、「こういう仕事があるんだけど、翻訳しませんか?」と声をかけたら、「新年早々、いいお話し!」と乗り気になってくださって。
「ぜひぜひMさんにも声をかけてください」というYさんのご推薦で、ノースカロライナ州在住のMさんにも連絡を取ることに。
Mさんも以前に大型電子部品カタログの案件でご一緒したことが。
翻訳歴も長く、私と同い年で合気道の先生もしておられて、とにかくテキパキと気持ちのいい方。
「できますよ」と二つ返事でご快諾いただけて、めでたくチーム結成となりました。
エージェントに原文を見せてもらったところ、1つだけ契約書関連の大きいファイルがあって、残りは販促資料がばらばら、という感じ。
エージェントはYさんやMさんとの取引きが初めてということもあり、私を翻訳に、Yさんをチェッカーに割り振ろうとします。
でも、販促資料はYさんがお得意だし、契約書は法律関連が好きとおっしゃるMさんに翻訳していただいた方がよさそう。
Yさんが「私がチェッカーをやっても構わないけど、ハンナさんはそもそも時間がないから私たちに声をかけてくれたんでしょ?チェッカーをするのが、一番時間がかからないんじゃない?」と提案してくださったこともあり、私はチェッカーを担当させていただくことになりました。
で、まずは先発ということで、Mさんが翻訳作業をスタートされたんですけど、このMさんという方、ただ翻訳がうまいだけじゃない。
Yさんもブログに書いておられたけど「影のプロジェクトマネージャー」ってあだ名がついてるぐらい、チームを取りまとめるのがお上手なんですよ。
今回のように、日本に初上陸する商品って、クライアントが日本語のことも日本のしきたりも何も知らないから、翻訳の仕方もスタイルも何も決まっていないことが多いんですけど、エージェントにその点を確認してもらったところ、今回も例にもれず、何も規則がないことが判明。
するとMさん、
「はい、じゃあ手分けして翻訳をするときは、最初に足並みを揃えておかないと、あとでとんでもないことになりますから、英語と日本語の間にスペースはなし、記号は全角ってことで統一してしまいましょう。」
・・・と、ちゃきちゃきっと決めてくださいました。
このスピード感で、かなり時間のロスが防げるんですよね。
・・・さて、スタイルが決まったところで、次に決めないといけないのは、用語。
プロジェクトマネージャーが「用語集を作りましょう。韓国語チームが先に作ったリストがあるから、メールに添付して・・・」なんてもたもた言ってるので、
「メール添付よりも、グーグルにあげちゃった方が、みんな同時に用語集を参照し合えていいんじゃない?」
・・・と何度か提案してみる。
だけど、このエージェントはそういう経験がないのか、わからないことはスルーしよう、みたいな雰囲気。
待っていても、お膳立てをしてくれる気配もなく・・・。
・・・するとMさんが、「じゃあ私がエージェントに了承を取って、グーグルに用語集をあげてしまいますね」と率先的に対応。
数分後に、Mさんからグーグルの共有リンクの招待メールが届きました。
この手際の良さ!
・・・まもなく、他の案件があって開始が遅れていたYさんが、翻訳作業に合流。
で、このお二人が雑談をしながら翻訳を進めて行くのですが、メールを交わしながら作業をする様子が、掛け合い漫才みたいで実に面白いのです。
販促資料というのは、誇張表現も多かったりするのですが、
「いや~、原文でこんなこと言ってるよ。すごいね。」とか
「この人、整形してるんじゃ?どこかで見たことあるような・・・怪しいねえ~笑」とか、
「ほんとに効果あるのかな?日本で売れるんでしょうかねえ」なんて、軽口で雑談してたかと思えば、
「この箇所はネットで調べたらこういう意味だったので、こういうふうに訳しておいたよ」などの貴重な情報もしっかり入って来ます。
チェッカーの私は、お二人の雑談を楽しく読んでいるだけで、この案件の基礎知識みたいなことがわかってしまうのでした。
「今日のランチはお持ち帰りだったよ」とか、「こういう仕事をしていると、運動不足で困るね」とか、「おっと、そろそろ仕事に戻らなきゃ」とか、他愛ないおしゃべりもするんだけど、それはそれでお人柄がうかがえて、ほっこり。
まもなく、Yさんの小さい翻訳済みファイルが、チェックに回されて来ました。
チェックをしても、お二人の翻訳は、ところどころ用語や言い回し、タイプミスを直す程度でよくて、間違っても全文大幅書き直しなんてことはないので、ほんと助かります。
ありがたいのは、「ちょっとこの翻訳、変じゃない?こういうふうに変えちゃってもいい?」とか私が言っても、
「うちの翻訳にケチをつける気か!」なんて怒り出す人はいなくて、
「えー、でもこの資料は在米邦人が対象っていうから、こっちの表現の方がなじみがあるかと思ってあえてそう訳したんだよ」とか、
「でもやっぱり最初の訳は違和感あるなあ。じゃあ、折衷案として、こういう訳ではどう?」
とか、気兼ねなく意見の交換ができること。
「あーでもない、こーでもない、って用語を考えるのって楽しいね!」
とか何とかいいながら、ケンカもなく、和気あいあいと作業を進めて行けるんです。
この間、ものすごい量のメールがばんばん飛び交うのですが、読むのが全然苦になりません。
ところが、作業も佳境に入って来た頃・・・
ひょんなことから、この商品にはビデオ字幕もあって、こちらを別のプロジェクトマネージャーが別の翻訳者に依頼していたことが判明。
さきに作業を終えたMさんが、「手が空いてるならこっちのチェックも手伝ってよ」と別のプロジェクトマネージャーから声をかけられたことで発覚しました。
エージェントは、ビデオは印刷物とは性質の違うものだから、とか言って、別管理にしていたみたいですが、やっぱり同じ商品だし、用語など統一しないといけないですから、翻訳者間で連絡を取る必要があります。
せっかくチームで統一を取ろうとしているのに、他の翻訳者さんがこっちのことを知らないで作業を進めておられたら、お互いの努力が水の泡というもの・・・。
ちょっと寝耳に水状態。
そこで、Mさんがエージェントに事情を聞き出し、ビデオ部分を担当しておられた、カナダはバンクーバー在住のCさんに連絡を取って、晴れてCさんもチームに参加していただけることになりました。
グーグルで用語集を共有するための招待メールなども、Mさんが全部手配。
このCさんも、途中参加でスタイルを合わせ直す必要があったにも関わらず、気持ちよく応じてくださいました。
初顔合わせだけど、いい感じです。
さて、そうこうしているうちに、翻訳とチェックが終わって納品を済ませたファイルのクライアントレビューが返って来ました。
レビューの訂正に従って、翻訳メモリ(注:過去の翻訳が蓄積されているデータベース)を更新してくれ、ということみたい。
予告なしにいきなり来たので、ちょっとびっくりです。
Mさんはファイルを真っ先に見て、「ここはこういうふうに変更されてたよ」と書き出してくださり、「用語集もアップデートしておきますね」と迅速に対応。
ところがメモリの更新を頼まれたYさんは、ちょうど息子さんの車が故障したとかで、想定外のピンチに立たされていました。
予定になかったお子さんの送り迎えの手配やら、車の修理・買い替えに立ち会わなければならず、スケジュールが押し気味。
翻訳をこなすだけでも手一杯なのに、メモリの更新なんて急に言われても、手が回りません。
「最後の2000語のファイル、間に合わなくなりそう~」というSOSを聞いて、
初参加のCさん、「時間が空いたから引き受けます」と名乗り出てくださいました。
クライアントレビューを反映させるメモリの更新は、Mさんが引き受けてくださることに。
ところが、チーム内ではてきぱきとやり繰りが進んでいるのに、Cさんがプロジェクトマネージャーに「私がやることになりましたので、承認お願いします」と催促メールを出しても、なぜか返事が来ません。
「あれー、いつもすぐに返事が来るのに、メールに不具合でも生じたかな?」と言いつつ、待つこと数時間・・・
「待っていても時間のロスだし、チームとしてはみんな了承してるんだから、始めてしまって大丈夫だと思いますよ」とMさんが言ってくださって、Cさんは作業を開始。
夜11時ごろにプロジェクトマネージャーから、ようやく返信が・・・。
なんとプロジェクトマネージャーも、小さいお子さんが熱を出したとかで、一日仕事ができない状態だったらしい。
同僚のプロジェクトマネージャーも休暇中ということで、ほぼ一日、プロジェクトマネージャー不在状態になっていたようなのです。
メールには、不在にしていたことのお詫びと、CさんとMさんがスケジュールをやり繰りしてYさんをバックアップしていたことに対するお礼が綴られていました。
するとYさん、「大丈夫。私たちはチームワーク抜群なのよ。お子さん大変だったね。私も4人の男の子のママよ」なんて、プロジェクトマネージャーに労りの言葉をかけているではないですか!
プロジェクトマネージャー、「えー、4人には負けたわ!」と、脱帽の様子。
Cさんも「うちも子供が二人いるのよ。小さいうちは大変だよね」と共感を示す。
Yさんも「子供なんてすぐに大きくなっちゃうから、今このときを楽しんでね」と、先輩ママとして励ましてる。
プロジェクトマネージャーにも、最強のチームワークだということがわかったもらえたようです。
それからも、Mさんは自分の担当の翻訳が終わっても、Cさんの翻訳のチェックやら、メモリや用語集の更新やら、メールやファイル転送に不具合があればさっとイニシアティブを取ってくれる。
プロジェクトマネージャーから「クライアントレビューについてどう思うか」なんて釈明を求めるメールが来ても、
「日本語っていうのは、いろいろな訳し方がある言語。商品名とかスローガンとか、クライアントがこの程度のお直しを入れてくるのは想定内でした」とか、チーム代表として状況説明のメールを書いてくれたりもして。
緊急時にさっとバックアップに入ってくれたり、割り込みの依頼にも対応してくれて、とにかくフットワークが軽く、頼もしい。
さすが「影のプロジェクトマネージャー」と言われるだけのことはあります。
そんなこんなで、このプロジェクト、想定外の事態にも対応しながら、さくさくと進んでおります。
こんな、翻訳者版カウボーイ・ビバップみたいなこのチーム・・・
世界中に散らばっていて、声をかけるとさっと集まって助けてくれる。
一匹狼のフリーランスだけど、助け合いの精神は誰にも負けません。
私はこういう方たちに支えられて、ここまで来ることができました。
近くに住んでたら、ほんとにみんなで打ち上げに行けるといいのにね。
「これだけ長い間友達なのに、会ったこともないなんて不思議だよね」とか、
「一度は顔合わせしたいから、今から積立でもしよう」と言いながら、まだ実現していません。
実はこのチーム、今回はご一緒できなかったけど、日本とオーストラリアにもお仲間がいます。
電子部品カタログの大型案件でご一緒したときのチームで、当時のプロジェクトの頭文字を取って「DKチーム」と暗号みたいに呼んでいます。
日本在住のMさんも、オーストラリア在住のMさんも、今回はかなわなかったけど、次回はぜひDK同窓会コラボを実現させましょう!
そしてこういうコラボにご理解・ご興味がある他の翻訳者の皆様とも、ぜひいつか、ご一緒したいものですね!
お読みいただいて、ありがとうございました。
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6件のコメント

  1. SECRET: 0
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    リン☆動画編集者という者です (~∀~||;)検索でヒットしたので、チョット覗きに来てみました(^з^)次回更新まだかなっ☆o(^-^)oそれデハ(°∀°)

  2. ひつじ より: 返信

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    PASS:
    以前にコメントさせて頂いたひつじです。皆さんの手際の良さやプロフェッショナリズムにただただ感服です。
    あと実は、作業量についてお話されている箇所に注目してしまいました。ハンナさん程のキャリアをお持ちの方は、3万ワード=半月分という感覚なのですね。ということは、1カ月あたり6万ワード…。それを報酬に換算すると、とても高額です(打算的な話で申し訳ありません…でも、それだけこなせれば、翻訳の仕事にも張り合いが出ると思いますし、うらやましいです)。
    ハンナさんのおっしゃる通り、1日8時間あたり2,500ワードの作業量が一つの目安とは、聞いたことがあります。
    それに比べ、1年目の私は、恥ずかしながら集中力や体力の面を考慮して、その半分(8時間あたり約1,200ワード)が限界です…。
    もし差し支えなければ、1日2,500ワードのレベルには、何年目くらいで到達されたか教えて頂きたいです。あと、その時に役立ったこと(翻訳支援ツールの利用、内容背景知識の習得、用語集の作成、いわゆる「慣れ」、訳しやすい分野への転向 etc.)もあれば、お聞きしたいです。
    通りすがりに近い立場なのに、このような立入った質問となり申し訳ありません。こんな公の場で返答しづらいことかもしれないので、その場合にはお気になさらずスルーしてくださいね。

  3. SECRET: 0
    PASS:
    >ひつじさん
    いつも応援ありがとうございます!なるほど、作業量に関することが気になりましたか。
    >1日2,500ワードのレベルには、何年目くらいで到達されたか教えて頂きたいです。
    お恥ずかしい話ですが、私は計画的に語数を増やして行ったわけでは全然なくて、割と行きあたりばったりでここまで来てしまいました。
    最初に継続的に受注した仕事がプレスリリースという仕事で、朝9時に原稿が来たら、その日の午後2時までに何とか形にして出さないといけない、という、今振り返るとかなり過酷な条件で毎日毎日納品していたのです。
    極限まで追いつめられると、目の色が変わったように腹が据わる瞬間というのがありまして(同業の方の中には「翻訳の神様が降りてくる」という言い方をされる方もいらっしゃいます)、そうすると火事場の馬鹿力みたいに通常の2倍ぐらいの分量がこなせたりします。その繰り返しで、気がつくと2000~3000語をこなすようになっていたというのが実情かと思います。
    もっと計画的に、作業効率を高めつつ少しずつ分量を増やして行った同業の方もおられるかもしれません。ですので、あまり参考になるアドバイスとは言えないかもしれません。
    ただ、「慣れ」というのはあると思います。繰り返しやっているうちに、こういう文体はこういうふうに訳そう、みたいなパターンが頭に蓄積されていきますので。
    あとは、簡単に「できない」と思ってしまわないことも、コツと言えばコツかもしれません。
    自分の能力に限界を設定しないようにする、と言いましょうか。。。
    少しでもお役に立ててるといいのですけど。
    今回ご質問いただいたことについて、あらためてブログ記事を後日書かせていただこうかと思いました。ひつじさん、ご了承いただけますか?

  4. ひつじ より: 返信

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    >蘭野ハンナさん
    ご丁寧な回答をいただき本当にありがとうございます。
    毎日朝9時~午後2時の約5時間でプレスリリースを納品ですか…!きっとその当初のお仕事がとても良い訓練となり、かなりの実力をつけられたのですね。
    「翻訳の神様が降りてくる」(笑)。いつかその境地に達してみたいです。私の場合、降りてきてくださる前に集中力が切れ、肩だけでなく頭の中まで凝り固まってしまいます…。
    「能力に限界を設定しない」ことが大切なのですね。今の私は、納期に追い詰められることが怖くて、お仕事受注の際には「限界」を超えそうなものをお断りしてしまっています…。いつかその限界を取り払いたいです。
    後日ブログ記事を書いていただけるとのこと…。ぜひぜひお願いいたします!楽しみにしております。

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    ひつじさん
    ご了承いただきありがとうございます。やはりせっかくブログに来てくださるのですから、何かためになることを持ち帰っていただきたいと思っていました。ネタを提供してくださって、感謝です。
    ひつじさんも、もっと量をこなしたいのであれば、実力を試すチャンスが来ると思いますよ。がんばってください!

  6. SECRET: 0
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    ブログ拝見させていただきましたのでコメ残しますね♡♡♡素敵な記事でした!!ありがとうございます☆お時間あるときにでも、ぜひぜひ!!私のブログにも足を運んでみてください☆

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