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翻訳作業量に関してご質問をいただきました

皆様、こんにちは!
前回、翻訳仲間とのコラボについてブログを書いたところ、拙ブログを訪問してくださった後輩翻訳者様から、翻訳作業量についてご質問をいただきました。
前回のブログで、翻訳者の1日の作業量として、「1日2,500ワードが1つの目安」と書いたところ、「2,500ワード」という作業量に注目してくださって、
Q. 1日2,500ワードのレベルには、何年目くらいで到達されたか教えて頂きたいです。
あと、その時に役立ったこと(翻訳支援ツールの利用、内容背景知識の習得、用語集の作成、いわゆる「慣れ」、訳しやすい分野への転向 etc.)もあれば、お聞きしたいです。


というご質問をお寄せいただきました。
・・・確かに、翻訳者ってどれぐらいの作業量をこなしているのかな?・・・って、気になるところかもしれませんね。
そこで、私個人の話なのでどの程度参考になるかわかりませんが、ご質問いただいた翻訳者様にもご了承をいただきましたので、お答えできる範囲でお話ししたいと思います。
個人差や専門分野の違いなどもあると思うので、あくまで参考程度に、ということでお願いします♪
私は1日2,500ワードを目安にしていますが、実際には毎日コンスタントに2,500ワードをこなしているかというと、結構浮き沈みがあります。
大型案件などの場合、最初の1、2日は、調べ物ばかりしているので、作業量は少ないです。
大体、1,000語強程度かなぁ。
内容がわかってくると、調べ物をする頻度が減って来て、翻訳に集中できるようになるので、作業量が加速度的に上がって来ます。2,500語と言わず、もっともっとできちゃう日もあります。
そのような浮き沈みはあるとしても、平均すると、1日大体2,500語程度はこなしているかなぁ?と思った、ということであって、「はい、2,500語終わったから、今日は店仕舞い」とか、厳密に区切っているわけではないです。
おそらく、他の同業者の方も、そんな感じの方が多いのでは?
あくまでも推測ですが・・・。
それから、「何年目で(その作業量に)到達したか」というご質問ですが・・・。
わかんないです(-_-;)。
これ、難しい質問です・・・。
・・・というのも、私の場合、この業界に入ったきっかけというのが、プレスリリースの翻訳のお仕事でした。
分量や内容を選べる立場になかったんですよね。
ここでプレスリリースの翻訳について、ちょっとご説明いたします。
個人的な話になって恐縮ですが、よろしければおつきあいください。
以前、「私が翻訳の仕事を始めたきっかけ」というブログにも書いたのですが、プレスリリースって、語数にしたら1本大体200語~1,000語ぐらいの新聞記事です。
一口に「プレスリリース」と言っても、いろいろ種類があります。
新商品発売のお知らせやら、大企業の業績決算報告やら、投資家向けの報告書やら、アンケート結果やら、アナリストの分析報告やら、見本市の体験レポートやら、もうさまざまで。
私はこのお仕事を、ワード単価じゃなくて、記事1本いくら、で受注していました。
長くても短くても1本一律いくら、という計算だったんですね。
最初、1日3本という約束で仕事を始めたんですが、何が起きるかわからないのがニュースですから、準備のしようがありません。
友達のMくんが、朝刊を見て、「このニュースをいち早く日本に流そう」と適当に見つくろって送ってくるので、フタを開けてみないと、長さも内容もわかりません。
私が特に難しいと思ったのは、新商品発売のお知らせでした。
何しろ、実際に見たことも触ったこともないものを、英語の説明だけを手掛かりに、あたかも自分が見て来たかのように記事にまとめないといけません。
そういうところは、発明品などの特許翻訳をしておられる方と似ている部分があるかもしれませんね。
ネットで探し回っても、まったく新しいコンセプトの商品だったりすると、参考になる情報がなかなか見つからないんですよ。
あとは、内容はわかっても、情報が新しすぎて、日本語がないから、何と訳していいかわからないんですよね。
頭を抱えちゃいました。
だけど何とか形にして納品しないといけないから、必死でしたよ。
ダンナに英語の意味を聞きまくったり、知っていそうな人に電話をかけたりメールしたり・・・。
・・・知り合いの翻訳者の中には、困り果てて、電話帳を調べて日本の関連企業に国際電話をかけて質問していた人もいたそうですよ。今の時代にそんなことしたら叱られるかもしれないけど、その執念には脱帽ですよ。
で、ニューヨーク時間の朝9時頃、テキサス時間の10時頃に原稿が来るでしょ?
すぐに着手して、1本目の翻訳が終わるのが12時ぐらい。
その後、だんだん髪の毛が逆立ってくるのを感じながら、2本目に取り掛かって、3時ぐらいまでに全部納品しないといけません。
その日の夕方には日本に配信しないといけないですから。
だけど非情なことに、時々難解な記事に当たることがあるんですよ。
わがんない・・・だづげでむっ」って半泣きになってたことも何度もありました。
あとは途中でパソコンがフリーズして、書きかけの原稿が消えちゃったりとか。
そういうときは、目の前が真っ白になりました。
しかも、悪いことは重なるもので、そういうときに限って、宅配便のお兄さんとかが来たりするんですよ。
そうなると、えらい殺気立った顔して玄関口に出たりね。
きっと私、ドーベルマンみたいな顔してたんじゃないかと思いますよ。
お兄さんも何も悪いことしてないのに、睨まれて、かわいそうにねぇ。
いつかお会いする機会があったらお詫びをいいたいです。
もうあんまりきついから、友達のMくんに一回、言ったんですよ。
「こんな分量は多すぎる。減らしてほしい」って。
そしたらMくん、ニヤニヤしながら
「えっそう?だけど、1日5本とか6本軽くこなしてる人もいるんだよ。
できないことないでしょ?」なんて言うんですよ。
鬼!(T_T)・・・と思いましたよ。
・・・Mくん、今は東京の外資系企業で証券アナリストをやってるはずだけど、今でもあの調子で後進をしごいているのかねぇ・・・。
まあ、いいけど・・・。
ともあれ、そういうわけで、3本の新聞記事を6時間以内に毎日納品する、という、かなりストレスの多い特訓を、私は2年間、来る日も来る日も続けたのです。
雨の日も、風の日も、車でカリフォルニアに向かう道中でも、旅先から納品していました。
まだ20代だったから、できたことかもしれません。
で、その後で、翻訳会社のトライアルを受け始めて登録していただくようになったのですが・・・
お取引を始めてみて、私には翻訳会社が天国みたいに思えたんですよ。
次の日に納品してもいいとか、料金も記事1本いくらじゃなくて、1ワードいくらで払ってくれる。
語数をこなすほどお支払金額が増えて行くわけで・・・。
なんて恵まれた環境だろうと思ったんですね。
・・・それで、徐々に翻訳会社様からお仕事をいただくようになって、現在に至っています。
そんなわけで、話が長くなりましたが・・・
ご質問の回答に戻りますと・・・
私の場合に限って言えば、最初は少ししかできなかったけど、途中から計画的に語数を増やして行った、というのではなくて、お尻に火が付いた状況に立たされて、火事場の馬鹿力で乗り切っているうちに、気が付いたら2,500語+をこなせるようになっていた、というのが実情です。
まあ、毎日毎日やっているうちに、「慣れ」が出てきて少しは簡単になった、というのもあると思います。
お仲間に聞いても、2,500語以上をこなしている人は、「食べて行かなければならないから、何でもやった」とか「死に物狂いだった」とか、人生のどこかである劇的な経験をして、それをきっかけに作業量が増えて行った、という感じの人が多いような気がします。
でも、誰もがこんなふうに窮地に立たされて、無理をしないと作業量を増やせないのか?・・・というと、そうとは限らないとも思うんです。
きっと自主的に無理なく分量を増やして行った、というような、計画的な同業者の方もいらっしゃるはず・・・。
翻訳者って本当に十人十色ですから。
そういう同業者の方のお話しも聞いてみたいですね。
子育てとか体調とか、いろいろな状況を考え合わせて、仕事量を調節できるのが、翻訳業のいいところでもあるわけで、人生でスローダウンする時期があってもいいと思う。
今の作業量は少ないけど、あとで増やそうと思って、体力や知識を温存しておくのも、ありだと思います。
ただ、お仕事のチャンスが巡ってきて、「できない」と反射的に思ったときに、
本当に、できないのか(=能力がないのか)?
あるいは、
できないと思っているだけなのか(=能力はあるかもしれないが、やったことがないのでわからないだけなのか)?
・・・ということを考えてみることは、大切かもしれません。
やってみないとわからない部分ももちろんありますけど・・・。
あとは、分量を増やしたかったら、私がやっていたプレスリリースみたいに、多少料金が安くても、必ず毎日来る、というお仕事をして、数をこなす/慣れる、というのも、いいかもしれません。
・・・少しでもお役に立てたでしょうか?
翻訳者にはいろんなタイプの人がいるので、「ザ・ベスト」という方法はありません。
他の方の体験談なども、機会があったら、ぜひ聞いてみてください。
(・・・でも、2500+語を翻訳し続けるって、肩や首がパンパンになるとか、別の悩みもでてきますが、それはまた別の機会に・・・)
お読みいただいて、ありがとうございました。
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翻訳作業量に関してご質問をいただきました」への6件のフィードバック

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    私は今は2000が限界かなあ。昔は3000くらいいったんだけどって、古い翻訳友達と話をしていたら、彼女曰く、当時はオンラインヘルプの仕事が多くて、文の構造が単純明快(機械翻訳でもできるくらい)。まだ翻訳ソフトがそれほど出回ってなかったので、3000ワードでも実質重複部分がいっぱいあった。だからだよって。なーるほど。今や翻訳ソフト使用がふつうだからおいしい部分の重複部分はワード数に入れなかったり、ファジーといわれる部分的に重複している部分は割引されているからね。ワード数3000の仕事です、っていわれて開けてみたら、軽く7000ワードくらいあって、結局重複部分はゼロ、ファジー部分は実際のワード数に割引率をかけた数字だから、3000ワードならこれぐらいで終わるだろうという予定している時間よりかなり長くかかることがけっこうある。3000ワード全部さらで訳すのと、実際は7000ワードあって、重複やファジーを引いて3000ワード分の料金で、っていうのとは似て非なるものなんですよね。話がちょっと変わってしまったけど。

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    へー、年齢や体力の低下で作業量が減ったのかと思っていたけど、そうじゃなかったのかあ。確かにファジーが入って来ると、話はややこしくなりますね。私は時々、ファジーの部分を無視して、新規のワード数だけ記憶していて、「なんで2000語のはずなのに終わらないんだろう・・・」なんて思ってることがよくあります。(→o←)ゞでも、いくらやっても、「そろそろ2500語かな」とかいう勘みたいのは全然働かないですね。途中で解析をかけ直して、「まだ終わらない」っていつも言ってます。

  • ひつじ

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    記事のUPをありがとうございました!
    「私が翻訳の仕事を始めたきっかけ 」の記事とともに興味深く読ませていただきました。
    「千本ノック」的な2年間の意味は、とても大きかったのですね。
    1日の作業量を増やし、生産性を高めるには、「お尻に火が付いた状況」「火事場の馬鹿力」などなど、やはり相当の覚悟が必要なのだということが良く分かりました。
    一時期、依頼を全てお受けして作業量を増やした結果、頭も心も身体も疲労困ぱいし、しかも家事が出来ない後ろめたさに、さいなまれました。あのような状態に戻りたくないと、現在はかなり仕事をセーブしてしまっています。
    でも、作業量UP・生産性UPを望むのであれば、やはりいつかは覚悟を決めないとだめですね。
    ハンナさんのように最初から「千本ノック」トレーニングを積もうとしない私は「甘ったれ」だなぁと思いますが、「翻訳者にはいろんなタイプの人がいる」という励ましのお言葉を胸に、今はゆっくりペースで翻訳に慣れ、1~2年後には覚悟を決める、という方針で頑張ってみようと思います。
    コメントが長くなりすみません。
    でも、とても参考になる記事をありがとうございました!!

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    >ひつじさん
    コメントありがとうございます!少しでもお役に立てたようで嬉しいです。
    ひつじさんは全然甘ったれなんかじゃないと思います。翻訳の仕事ってほんとにどこかで線引きをしないときりがないですから。無理して取り続けると体を壊したり燃え尽き症候群になったりしますし。
    あと、私が受けた特訓は、短距離走には向いているかもしれませんけど、長距離走には向いていない方法だと思うんです。長く続けるためには短距離走と長距離走を使い分けることも大切なのではないかと思います。あまり無理をせずに、マイペースで淡々と続けた方が、結果的には長続きする可能性だってあります。ですのでどちらがいいとも一概に言い切れないと思うのです。ひつじさんに一番合った方法を見つけて行っていただければと思います。
    今回のご質問、こちらこそありがとうございました。おかげで読者様がどのようなことを知りたいと思っているかがわかりましたし、ひつじさんのおかげでアクセス数も増えました。こういう交流は大歓迎ですので、また何かありましたら、いつでも聞いてくださいね。

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    はなさん、
    興味深い投稿ありがとうございました。
    はなさんは今でも相当な量をこなしていらっしゃるのかと思っていましたが、なんか安心しました。
    昔、単純なローカリゼーション (オンラインヘルプやマニュアル) を主にやっていた時は1日4000~6000くらいざらにやっていましたが、今では難しい仕事ばかりで私も1日平均して2000~2500程度になってしまっています。
    最近は翻訳料も下がっていますし、年を追うごとにだんだん貧乏になっているような気がします。

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    >ちかこさん
    コメントありがとうございます。そうなんですよ。業界の価格崩壊とこちらの体力低下で、今後尻つぼみになっていくことは必至、という感じなので、どうしようかなと思っているのですが。
    肩こりもひどくなる一方ですしね・・・泣
    何か打開策があるといいのですが。

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