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日本語はとってもカラフルな言語

皆様、こんにちは!
お元気でお過ごしですか?
ゴールデンウィークに入りましたが、皆様、何か特別なご予定は?
私はゴールデンウィークに関係なく、仕事です・・・。
海外の会社は休みじゃないもんねぇ。
むしろ、日本在住の翻訳者が休んで人手不足になるので、普段より忙しいぐらい。
先週は、米国の医療団体の依頼で、問診票の翻訳の言語検証(Linguistic Validation)って仕事をしてました。
「ん、何?言語検証って?
翻訳と違うの??」
・・・って思われる方もいらっしゃるかもしれないので、少し説明しますね。
通常の仕事の流れは、
翻訳(今回は日本支社の社員さんが担当)

チェック(今回は在米の翻訳者が担当)

納品
・・・で終わりなんだけど、今回は病気の診断に使う問診票なのでね。
いつにもまして正確さが求められる。
英語の原文と訳文の解釈にちょっとでもズレがあっては正しい診断ができない・・・ってことで、実際に一般の人に回答してもらって、感想を聞くことになったらしいのですね。
で、ニュアンスが正しく伝わっているかどうかを確認するために、「この文章からどんなイメージを想像しますか?」などと質問する。

そして回答結果を英語のレポートにまとめて米国本社に送る。
そういう、調査員みたいな仕事でした。
なので私自身は翻訳は担当しませんでした。
ちょっと毛色の違う、珍しい仕事でしたけどね。
どうしてこの仕事を引き受けたかというと・・・
翻訳者って、通訳者さんと違って、普段はお客さんの反応を見る機会がほとんどないんですよね。客先に原稿を納品したら、それで終わり。
なので、せっかく日本にいることだし、一般の方が翻訳を目にしてどんな顔をされるのか見てみたいと思って、引き受けることにしたんです。
Facebookで協力してくれる方を募って、調査に行ってきました。
いざ聞いてみたら、いろいろな反応があって面白かったです。
たとえば、「get out of bed」って表現1つ取っても、英語だと一種類の行動パターンしか思い浮かびませんけど、日本だとベッドに寝ている人と布団に寝ている人がいるので、一括りにはできない。
布団の方が、起き上がるときの体の負担ははるかに大きいですよね。
その違いを考慮しないと、日本とアメリカで診断基準が微妙にずれる。
「run errands」だって、銀行へ行ったり郵便局へ行ったり・・・という「雑用を済ませる」って意味なんだけど(なぜか英辞郎では「使い走り」になってました・・・「お使い」って意味はないと思うんだけど・・・。)、アメリカだったら大抵は車を運転して近くまで行くんだろうし、それぞれの国によって思い浮かべるイメージが微妙に違うんですよね。
こういうフィードバックを踏まえて、英語と同じ状況がイメージできるようになるまで、訳文に改訂を重ねて行くことになるのでしょう。
最終版が皆様のお手元に届く頃には、かなり大きな変更が加えられているのではないかと思います。
本当に、現場の生の声を聞くことは大切だな~・・・と実感した次第です。
それにしてもつくづく思うのは、日本語って、バリエーションが豊かでカラフルな言語だなということです。
英語で「I」って言葉を聞いたときに、「私」って言葉を連想する人もいれば、「僕」を連想する人もいる。
日本語にはいろんな「I」があるんですよね。
翻訳者は「I」を見て、「私」って訳すべきなのか「僕」(あるいは俺、あたし、わし、オイラなどなど)って訳すべきなのかを、周囲の状況から判断しないといけません。
逆に言うと、「僕」と「私」のニュアンスの違いを英語で伝えるのも難しいですよね。
どっちも「I」だから。
「I」しか知らない人に、「私」と「僕」の違いを説明するって、至難の業だと思います。
そう考えると、日本語ってほんとに奥が深くて繊細な言語だな・・・と思ったのでした。
今日はちょっとマニアックな仕事の話になっちゃいましたが・・・
「謎の職業・翻訳者の仕事をご紹介する試みの一環」ということで、お許しくださいませ。
ではでは皆様、楽しい連休をお過ごしください。
お仕事にご協力いただいた皆様、どうもありがとうございました!

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日本語はとってもカラフルな言語」への8件のフィードバック

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    >ぐうたらMacy@ワーホリモードさん
    そうそう、上下関係とか役割を重視する文化と関係があることは確かだと思うんですよね。「I」だけであとは何も考えなくていい言語と比べると、選択肢が多いだけに、悩みも多いのかなと思ったりもします。男性語、女性語も英語にはあまりありませんしね。
    いつもブログをご覧いただいて、ありがとうございます!

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    >ランサムはな(蘭野ハンナ)さん
    男性語、女性語もそうですね!語尾の個性とか…そう考えると、たとえば英日の出版翻訳なんて、作家の素質も必要なのかも。。ハンナさんのブログ、勉強中の身には大変ためになります^o^ありがとうございます☆

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    >ぐうたらMacy@ワーホリモードさん
    翻訳は奥が深いので、いくら勉強しても足りない気がしますが、面白いですよね。いろいろな気づきが得られると思います。翻訳のお勉強をされてるんですね。がんばってください!ブログもいつも応援いただいて、ありがとうございます~。

  • Sayo

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    はじめまして。
    また更新が再開されて嬉しく思っています。
    医療関係の和訳をやっているSayoと申します。
    習慣や文化の違いは日本とアメリカのものしか分からないのですが、特に一般の読者を想定した、医療保険や日常生活にも言及が及ぶ翻訳の際は、時々「このまま訳しても『?』だよね」と思うことがあり、悩むところです。
    overwhelmedなど、未だにぴったりの日本語を思いつくことができずにいるものもあります。
    翻訳って、本当に奥深いですね。
    Hanaさんの記事は、視点が新鮮(?)で「ほほお」と思うことも多いです。更新楽しみにしています。

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    >Sayoさん
    こんにちは!メッセージをありがとうございます。
    本当に「このまま訳しても『?』だよね」って、多いですよね!私もそう思います。
    たとえば今回は「meaningful」という表現が「汗」でした。患者さんに「meaningful」とか言われても、何をもってmeaningfulとするのか?というところで、訳出以前に意味がわかりませんでした。。。医療保険も制度が全然違いますしね。
    overwhelmedはどういう前後関係なのでしょうか?状況を教えてくださったら、一緒に考えてみますよ。
    ブログの更新を待っててくださったなんて、嬉しい限りです!これからもがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

  • Sayo

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    あ、すいません、overwhelmedは、仕事とは関係ないんです。
    overwhelmedて洋書を読んでいるときに、結構出てきたりしませんか? 私は英和辞書育ち(?)なんで、すぐにぱっと「圧倒される」が頭に浮かんでしまうんですけど、英語のoverwhelmedはもっと「うわあ、あかんわ、もうどうにもならんわ」感があって、なんか違うなあ、と思いつつ、いつもぴったりの言葉を探し当てられないという・・・単に、私の語彙が貧弱ってだけの話かもしれません。
    お騒がせしました。
    また寄ります。

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    >Sayoさん
    あ~、そういうことだったんですね。いや、私も最初に思い浮かぶのは「圧倒される」です(私も英和辞書育ち)。感覚的には「いっぱいいっぱい」とか、「打ちのめされる」って感じでしょうか。あとは「首が回らない」とか・・・あ、でもこれだと意訳しすぎかな?また思いついたら書いてみます。

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