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インハウストランスレーターをやってみて思ったこと

先日から、多くの方々にフォローや読者登録をいただいて、本当に感謝感激でございます。
なかでも、翻訳者の方々が続々とつながってくださって、ありがたいことです。
どうやら、翻訳コミュニティでも有名な方がご紹介をしてくださったようで・・・。
同業の方々のご支援をいただき、本当に心強く思っております。
ロック歌手だったら、「セーンキュー、ベイベー」とか言ってる心境なのかな?と思います(*^▽^*)。
しかし、アクセス数が増えてから、私が書いてきた記事をあらためて振り返ってみますと・・・。
ラーメンをすするときの音の話やら、ヌードを送りつけるときの英語表現やら、せっかくたくさんのお仲間の翻訳者の方々に読んでいただいているというのに、あまりにも次元が低い(泣)。
数か月前に、ブログを開設するにあたって、とある方に相談しましたところ、このようなアドバイスをいただいたことを思い出しました。
「ブログはどうしても、その人の性格、本性が出てしまう。」
・・・ほんとにそのとおりですねぇ(泣)。
そこで今日は、貴重な時間を割いて当ブログに来てくださる、特に翻訳者の方々/翻訳に興味がある方々のために、少しは参考になる情報を持ちかえっていただきたい、との願いを込めて・・・。
私が経験した社内翻訳者のお仕事というものについて、フリーのときと比べて、どのように違っていたか、という感想をお話してみたいと思います。
(まあ、こんな私のことですから、すぐに低次元の話へと脱線するかもしれませんが・・・汗。)
前回、「社内翻訳者とフリーランス翻訳者(http://blog.ameba.jp/ucs/entry/srventryupdateinput.do?id=11838043405)」という題で、2回に分けて記事を書いたときは、ライフスタイルですとか、仕事に対する姿勢などの違いについて、自分なりの感想をお話しました。
今回は、具体的に仕事を始めてから、自分が経験した戸惑いとか、新たに学んだこと、などに焦点を当てたいと思います。
既にインハウスのご経験がある方にとっては、退屈な内容になるかもしれませんが・・・。
まあ、あくまでも個人的な経験と感想、ということで、聞き流していただければと思います。
ともあれ、インハウスの翻訳者になって、ちょうど一年と数か月が過ぎました。
まだまだ社内翻訳者としては足りない部分が多いかと思いますが、一応ひととおりのことは経験したところです。
仕事を始めてみて、最初にびっくりしたのは、ファイル数が半端じゃない!ということです。
フリーのお仕事でも、何百というファイルが入ったフォルダを丸ごと渡されることはありましたし、ファイル数を開いたり閉じたりするだけでも時間がかかって閉口したことも何度もあったので、覚悟はできていたつもりでしたが・・・
・・・それでも一人で処理できる分量というのは、全体から見ると、本当に微々たるものなんだな~、ということを実感。
特に、数々の製品がローカライズされていて、年に2回ぐらいアップデートが入る主力製品などの場合、そのファイル数と言ったら、想像を絶する多さ。
製品ごとのフォルダが軍艦のようにずら~っと整列しているというのは、見ているだけで圧巻。目が回りそうでした。
当たり前じゃないかと言われればそのとおりですが、実際に目の当たりにすると、やはり圧倒されます。
ファイル数だけでなく、メールの数もすごい。
自分宛てでなくても、翻訳とは関係のないことであっても、ちょっとでも関係のある話題であれば、業務連絡メールが来ます。
個人で仕事をしているときとは比べ物にならない量です。
迷惑メールではないことはわかっているので、読もうとするのですが、最初のうちは、自分がその話題にどのように関係があるのか、全然わかりませんでした(しかも全部英語!泣)。
茫然としてしまいました。
そもそも、なぜ自分がその話題の輪に加えられているのかがわからない。
加えて、そのメールを読んで、自分は何をすることを期待されているのかがわかりませんでした。
たとえば、エンジニアとライターが技術的な不具合について議論しているメールが来た場合に、
(1)なぜ翻訳者がそのことを知っていないといけないのか?(翻訳とは直接関係なさそうだが・・・)
ということと、
(2)そのメールを読んで、自分は何をすることが求められているのか?
・・・ということが、まったくちんぷんかんぷんで、困りました・・・。
フリーのときは、コーディネータ/プロジェクトマネージャさんから「対応可能ですか?」と打診があって、仕事が送られてきて、自分の担当分を終えて納品すれば、それで終わり。
非常にシンプルなワークフローです。
フリーの仕事の流れをまとめてみますと、
翻訳コーディネータ/プロジェクトマネージャより打診

対応の可否を知らせる

仕事が送られてくる(発注書を待つ場合も)

翻訳をする(作業中、質問があればクライアントに連絡するか、納品時に一緒に注記を送付)

納品、請求書送付
だけで済む。
仕事が来るまでは、自分から動くということはそんなにありませんよね?
ところが、社内翻訳者の仕事になると、この矢印が一方通行ではなく、行きつ戻りつします。
状況によっては、自分で新しく矢印を作らないといけないことも・・・。
プロジェクトが立ち上がってからリリースに至るまで、全体のプロセスを把握していて、そのプロセスの中での自分の立ち位置というものを理解していないと、いい仕事はできない・・・と言うことでしょうか。
私の場合、フリーの時期が長くて、翻訳を納品してしまったら、あとは関係ない、という立場が長かったので、翻訳自体で困ることはそんなになかったのですが、それ以外のことがわかっていないな~、というのを痛感させられました。
プロジェクト進行表に目を通して、ライターからファイルが届くのが遅いようだったら、自分で催促したり、挿絵のイラストに使う画像に抜けているものがあったら、出版部に問い合わせて取り寄せるなど、自発的に連絡を取って、自分の必要なものを集めなければいけない。
問題が起きたら、誰に問題解決を依頼すればいいのか(エンジニアの問題なのか?ライターの問題なのか?上司に相談が必要か?)と言ったことも、全部自分で判断しなければいけないようなのです。
いかに自分が、これまで他の人に仕事のお膳立てをしてもらっていたかを実感しました。
出してもらった指示に従う、というのには慣れていましたが、指示が出ていない状況で、自主的に判断して必要な人に連絡を取り、資料を集め、次の行動を起こす、というのは、私にとっては未知の世界でした。
慣れるまで、結構時間がかかったと思います。
大体、一年目でプロセスがわかっていなかったので、ついて行くだけで精一杯という感じでしたし・・・。
この一年の間に新しいことをたくさん教わりましたけど、その中でも、「全体の流れの中で自分のやるべきことを判断し、それに従って行動して行く」というのが、一匹狼の期間が長かった私には、最大の難所だったのではないかと思います。
最近になって、ようやく少しずつ、雲が晴れるように、前後関係が見えてきた感じはしますが・・・。
他の会社のインハウスの方も、似たような状況におられるのでしょうかねぇ。
あと、その他にこの会社でびっくりしたことは、翻訳者とライターが割と対等な関係として扱われていたことです。
普通、フリーの場合、翻訳をしていて英文に不明な点が出てくると、原文の意図をたずねる質問を翻訳会社経由でライターに送ってもらったりしますよね?
原文の書き方が不明瞭であったり、誤字脱字が見つかることもあって、これまではそういうときは、私なんかは「これは正しくはXXでしょうか?」みたいな聞き方をしてきました。
でも、この会社では、ライターにおうかがいを立てるというよりも、間違いが見つかったら、ライターに指摘してあげてください、そうすれば、英語の製品も質が上がりますから、お互いにいいことなんです、と言われます。
まあ、長年の習慣のせいか、まだ「はいそうですか」と言って「早速ですが、ここ間違ってますよ」と指摘するのは、どうも気が引けますが・・・。
どうしても、ネイティブじゃない自分が、ネイティブスピーカーであるライターに間違いを指摘していいんだろうか・・・と、及び腰になりそうになるのですが、まあこれも、ここでの流儀ということですから、慣れて行くしかありません。
その他にためになったことは、自社製品のトレーニングはもちろんのこと、フリーの立場ではちょっと自腹を切るのがためらわれるような、イラスト画像に手を入れるツール(←買うと高い!)や、製品に付随するヘルプファイルのコンパイルツール、さらにはカスタム社内ツールなどに触れる機会が与えられたことです。
翻訳の本業からはやや外れるので、メインの作業はエンジニアさんや印刷担当の方にお任せしますが、画像をちょっと簡単に修正したり、文字部分を翻訳するなど、翻訳に関係する部分は、翻訳者もできなければいけないということで、勉強させていただくことができました。
まだまだ最低限のことしかわからず、手元もおぼつかないですが、以前と比べて少しは使いこなせるようになってきたかなと思います。
原文の意味や、ツールの使い方について、質問をすれば答えてくれる方が周囲にいるのも心強いです。
そういうわけで、製品のリリースに至るまでの、翻訳にまつわるさまざまな工程を実際に経験することができた、というのは、大きな収穫だったと思います。
ものづくりの現場で、どういう顔をした人が、どういう作業を経て完成に近づいていくのかを実際に見ると、一人で作業をしているときとはまた別の側面にも注意が向くようになります。
・・・今回、フリーとインハウスと両方を経験してみて、どちらがいい、というのは、正直、決めにくいと思いました。
どちらも一長一短があると思います。
フリーの方々の強みは、第一にビジネススキルや交渉力があるところだと思います。
まあ、誰でもフリーになったら、食べて行かなければならないので、いやでも覚えることですが・・・。
第二に、いろいろな分野・内容の文章の翻訳/翻訳ツールの使用経験があるところ。
どんな案件が来ても、それなりに対応しなければいけませんからね。
生存能力があると思います。
たくましいと言うか・・・。
どちらが向いているか、という適性も関係あるでしょうし、価値観やライフスタイルの違いもあるでしょう。
でも、1つ言えることは、「社内翻訳者」とか「フリーランス」とか、そのような既成概念の枠で線引きをしてしまうことはないのでは、と思うのです。
今は、SNSの発達もあり、世界中どこにいても、つながることができる時代。
そんな時代に、枠に囚われているのはもったいないと思います。
これからは、社内翻訳者も、フリーランス翻訳者も、
日本在住の翻訳者も、日本国外在住の翻訳者も、
翻訳者を目指している人も、そうでない人も、
既成の枠に囚われることなく、どんどんつながりを広げて行くべきなのではないでしょうか。
そして、情報を出し合って、強いところは高め合い、弱いところは補い合えるようにすれば、今までにはなかった発想や、思いがけない連鎖反応、あるいは効果が生まれるかもしれません。
そのような新しいつながりと、そんなつながりによって広がる可能性に、大いに期待したいと思います。
私も、これからもボーダーレスな翻訳者を目指して、がんばりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
長くなりましたが、お読みいただいて、ありがとうございました。

ツイッター⇒@HanaKRansom です。引き続き相互フォロー受付中!
読者登録(アメーバ)の方もよろしくお願いします。

インハウストランスレーターをやってみて思ったこと」への6件のフィードバック

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    おーすごい!壮大なビジョンで締めくくられた今日のブログでした!
    しかし、ほんとフリーランスだとプロジェクト全体のほんとわずかな部分しか見えていないんですね。自分が翻訳したものが最終的にどんな形でどんな風に人目に触れているのかっていうのはまず目にすることがないです。はるか昔、翻訳会社を通さずに直接仕事をした会社は印刷したパンフレットとかを資料用にくれたりしたものですが、今はそんな形では仕事していないので。
    それとライターに対する不平不満は自分の英語力を棚に置いて、けっこうあります。でもフリーランスだと直接ライターとやりとりってことはないですから、納期までに回答がないこともあって、とにかく勇気と決断で訳し切る!みたいなこともやりますね。
    それからファイルの数かあ。昨日、あるクライアントからいただいた仕事はわずか1800ワードなのに、Zipファイルを開けたら80個もファイルがあって、えー!こんなにファイルがあるー!と一人でわめていたのですが、その程度で文句を言ってはいけないんですね。
    おもしろいトピックです。続きを楽しみにしています。

  • りん

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    遊びにきてみました~♪
    実は、更新されるのいつも楽しみにしてるんですよ~!
    私もブログ書いてるので(下手ですが…)よければ遊びに来てください。

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    別の方へのコメント -> http://ameblo.jp/tenoriebi3-2/entry-11833815961.html#cbox に書きましたが、クレーマーなわたしは大胆不敵にもネイティブチェッカーに文句入れてやったことがありますw
    ・・・ま、それはともかく、今年になってから、実はわたし社内翻訳者になろうとして、ハローワークの紹介でとあるメーカーに履歴書を出したのですが、瞬殺でした。試験どころか面接さえだめ。
    もう間違いなく年齢性別と、フリーランス歴が長いためかえって嫌われたのだと思っていますが・・・。

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    >akichanさん はい、会社はスケールが違うなというのはつくづく実感します。ファイルの数も多いけど、それを大量に処理する社内ツールみたいなものもあるんですよね。やっぱりエンジニアみたいな人がいてくれると全然違うなと思います。
    文芸翻訳なんかだと、翻訳者の名前も載せてもらえるし、手塩にかけたわが子みたいな愛着もわいてくるのかもしれませんが、技術翻訳は、どうしても量が勝負になってしまいますね。

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    >てのりえびさん、こんにちは。てのりえびさんはクレームをつけるのお上手なんですね。それは英語がお上手だってことなのではないでしょうか。私は英語で喧嘩しても絶対に太刀打ちできないと思うので、最初から諦めムードです。
    就職は、実は私も年齢で落とされるかと思いました。もう40代後半にさしかかってましたから。てのりえびさんと同年代ぐらいでしょうか?しかも会社勤めの経験もなかったから、ラッキーだったとしか言いようがありません。採用していただけたのは、アメリカというお国柄もありますが、あとは現地に日本語翻訳者があまり多くなかったということも関係していたんじゃないかと思います。入ってみたら、あんまりものすごく若い日本人はいませんでした。最近の若い人は留学したがらないという話しを聞きますが、そういう背景もあって日本人の数そのものが少なくて、競争が厳しくなかったんじゃないかとも推測しています。

  • ななこ

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    ななこといいます☆アメともになりませんか~☆記事と関係なくてすみませんwwそれでは~!! 更新がんばっていきましょうー^^

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